人間音痴

主に二次創作で同人活動をしている男です。時折自分の考えをまとめるのに使用しています。

もう小説を書きたくない

  もう、小説を書きたくない。

 そう思って、どのくらい経つのか。イベントを申し込んで、新刊の原稿をするたびに、毎回思っている。というか今も現在進行形で思っている。

 

 自分が二次創作を始めたのは十数年前。個人サイトの時代。その時から、絵や漫画ではなく小説を書いていた。理由は簡単、絵が描けないから。絵はすぐに上手くならない、けどキーボードさえあれば字は打てる。それに絵のように、あからさまな上手い下手もバレない。今思えば文章だって稚拙なのは読めばすぐわかるんだけど。とにかく、小説を選んだのはそんな理由だった気がする。

 

 小さい頃からお話を考えるのは好きだった。けれど、それをちゃんと形にすることはなかった。思い立って、ノートに鉛筆で書き始めても、ちゃんと完結させたことはなかった気がする。元より飽き性で、日記とかも数日書いては放置、ということが多かった。

 

 二次創作をネットで見るようになってから、自分でも創作したいと思い、HTMLの本を読みながら個人サイトを作った。ヤフージオシティーズのサイトだった。タグを打ち込みすぎて、今でもソラでHTMLタグは打てる。無料の素材とか借りて、頑張って作った。けれどデザインセンスが全く無くて、サイトバーとメイン画面、それぞれに異なるチェックの背景とかにしていた覚えがある。「十年前のダサデザインWEBサイト」みたいなくだりを見ると刺さりすぎて死にたくなる。いやそれはちょっと違うけど。まぁとにかくダサかった。当時はあんま気づいてなかったけど、最近までサイトが残ってて、見直したら死んだので、運営に消してもらった。

 ダサさは置いておいて、とにかく小説サイトを立ち上げた。SNSやPixivの流行っていない当時から、やはり小説より漫画のほうが持て囃されていた。一応、その時代にネットで生きてなかった方の為に説明すると、当時はジャンルごとに「サーチ」というものがあって、そこに自分のサイトを登録することができた。取り扱っているキャラやカプ、甘々とかシリアスとか作品の傾向もタグ登録できて、同じ趣味の人が検索しやすい、みたいなシステムだった。それで、その中にランキング? というか、アクセス数の多い順に並べる、みたいなのがあったんだけど、そのどれもが漫画サイトだった。まぁ、絵の方がキャラの可愛さやかっこよさが目に見えて伝わりやすいのはいつでも変わらないからだと思う。(今書きながら思ったけど、もしかしたらサーチとランキングサイトは別だったかもしれない。まぁとにかくそういうランキング形式のサイトがあったよということです)

 それでも自分はサイトで小説を書いた。勿論、理由は絵が描けないから。絵を練習しようという気もなかった。いや、時々イラスト練習ノートみたいなのを作ってはいたのだけど、1,2ページ、証明写真のようなキャラを書いては、放置していた。かといって、文才もなかった。なのに、やたらスクロールしても必ず右下に固定される画像とか、MIDIとか、マウスポインタについてくるドット絵とか、ちょっと豪華に見える感じの小細工ばかりしていた。でもそんなことだけでサイトに設置したアクセスカウンター(アクセス数が表示されるやつ)は回らないし、BBS(掲示板。今のようにSNSが普及してない時代、それで交流してた)は誰も書き込まないし、リンク(仲良しのサイトさんのバナーを貼るページ。そこで大抵友達がいないのがバレる)は素材サイトと同盟サイトばかりだった。「誰もいない感じがとっつきづらいのかな?」とかポジティブシンキングして自演でキリリクしたこともあったし、自演でBBSに書き込んだこともあった。けれど、そもそも誰も見てないので特にサクラ効果もなく、結局死ぬほど誰とも交流がなかった。

 自分から交流しに行けよ、と思うかもしれないけれど、いろんな人に欲されている勝ち組人間に、誰も見ていないようなしょぼいサイトを晒すのが恥ずかしかった。特に面白くない駄作小説を並べて、とりあえずあるだけのBBSやリンクページを見せて、友達がいないのがバレるのが嫌だというプライドだけはあった。(そもそも自分が男だというところにも引け目があったのだけど。)

 当時の交流は、みんなが見れるBBSに書き込むとか、みんなが見れるブログにコメントするとか、あとは@が☆になってる個人メールアドレスにメールするとか。今みたいにいいねをしてとりあえず存在を知ってもらう、みたいなジャブはできず、即リングに上がる、みたいな結構勇気がいるものだった。(自分にとっては。)結局勇気はなく、友達は一人もできず、細々と個人サイトを続けていた。

 

 そもそも、別に小説を書くことも特に好きというわけではなかった。最初のほうに書いた通り、「絵が描けないから仕方なく小説を選んだ」のであって、その表現方法だからこそ気に入っているというわけでもない。だから、小説を書くのも苦だった。日記が続かないのと同じで、小説を一本書ききるということがなかなかできなかった。確か、半年に一回更新するかどうかみたいな感じだったと思う。そりゃ、面白くもないのに更新がそんな頻度だったら、誰も見に来るわけがないのだけど。誰も見てないから更新する気は起きないし、更新がないから誰も見ないという悪循環にいた気がする。だけど何年も誰も来ないサイトを運営していると、別にカウンターが回らないこと、交流がなくて友達がいないことにも、そこまで寂しさなどはなかった。

 

 それから、周りのサイトが立て続けに閉鎖したり、工事中になったままになりして、自分もほぼ創作はしなくなった。創作していたジャンルの漫画が完結し、二次創作自体も斜陽になっていたからだと思う。その後は「これ!」という、ハマっているジャンルも無く、数年はただ普通にいろんな漫画を読んだり、アニメを見たりしていた。時折、個人サイトを新たに作ってみたりはしたのだけど、結局交流がないことは目に見えてるし、小説を書く気も起きず、すぐに潰した。Pixivは確か当時もあったはずだけど、小説投稿機能はまだなかった、気がする。とにかくPixivはイラスト投稿向けのサイトであって、小説しか書けない自分には縁のない場所だと思っていた。

 余談になるけど、そこから少し、ニコ厨になった。ボカロ厨。ガチでメルトとかそのあたりの世代、化石ニコ厨。毎週ボカランの全ての曲をチェックしたりしていた。見るだけでは飽き足らず、手書きMADとか、踊ってみたまで投稿したことがある。わりかし一番大きい黒歴史かもしれない。そしてここでもカウンターは回らなかった。

 

 そんな時代を経て、TwitterとPixivに辿り着く。今調べたら、Twitterの日本サービスは2008年、Pixivの小説投稿機能は2010年に開始したようだけど、自分が使い始めたのは3年前くらいだ。あまりにも個人サイトで孤立、鎖国しすぎていて存在自体を知らず、時代の波に全く乗れてなかった。

 Twitterを利用するようになって、少しずつフォロワーができた。ワンドロ最盛期、というか、毎週、毎日何かしらのワンドロが開催されているような時期だった。いろんな人の創作を見て、自分も少し創作に復帰したくなった。フォロワーが0なのを恥じながらも、自分も少し参加するようになって、そこで見つけて話しかけてくれた人が何人かいた。(もちろん、絵は上手くなかったがその当時は「ワンライ」という概念が普及してなかったから渋々絵を描いた。絵が描きたくてというよりは交流目当てでやってた。)個人サイトでは、妄想や落書きに反応などなかったけれど、下手な絵に少しでもいいねがつくと、それがお世辞だったとしても嬉しくなった。

 

 Pixivの小説機能も知って登録したけど、更新速度は相変わらずだった。やはりここでも漫画描きのほうが強いし、小説のほうだって圧倒的に上手い人が目に見えるようになった。いいねをたくさん貰う人、閲覧数が5桁を超える人、何万字も長い小説を書ける人、一ヶ月に何本も投稿している人。自分はそのどれにもなれなかった。努力が足りないのでは、と言われればそれまでなんだけど、努力をしたいほど二次創作に、そして小説を書くことにまだ情熱もなかったのかもしれない。

 そもそも「見てもらえないのが当たり前」という諦めの気持ちもあった。それに、今までは個人サイトではただ妄想を書き散らしていただけだったけど、それがPixivでは「〇〇字」と表示されるようになって、あまり長い小説が書けなかった自分は満を持して書いた小説が1000字にも満たなくて、それがなんだか「内容が薄っぺらい」と言われているような気持ちになった。誰もいいねしない投稿、一人だけブックマーク数の桁が一つも二つも少ない投稿、ここでも「実力が無くて友達がいないのが露呈する」のが恥ずかしくて、あまり投稿はしなかった。全くしなかったわけじゃないけど、投稿しては恥ずかしくなってすぐに消したりした。

 

 Twitterで活動し始めて数ヶ月、即売会というものを知る。いや、十数年オタクをやってきて今更?という感じなのだけど、本当に国交を断絶していたので、そういうイベントがあることを知らなかった。なにせペンタブの存在を知らなくて、絵描きはみんなマウスで描いていると思ってたような化石だ。ともかく、オタクはネット上だけでなく実際に会って交流しているらしい。優しいフォロワーさんに色々教えてもらって、ちょっと行ってみたいなと思い、初めて一般参加をした。確かスパークだった気がする。一般列に大量の人が並んでいて、こんなに人がいるものなのかと驚いた。それで、その時ハマっていたジャンルが割とでかいジャンルで、ホールの半分はそのジャンル、みたいな感じだった。「ここにいる人、みんな自分と同じものが好きなんだ」といたく感動した。だって今まで個人サイトで誰とも交流しなかったのに、同じものを好きという人間が実際にこんなにいるところを目撃したのだから。そして、自分もサークル側としてイベントに出たい、と思った。

 

 数ヶ月後、初めてのイベントサークル参加をした。やたらと行動力だけはある人間になっていたから(多分孤独だった反動で)、一般参加後にすぐ、次にある即売会に申し込んだ。ひいひい言いながら初めて本を作った。当日はめちゃくちゃ緊張した。サークル参加、というよりは男がスペースにいるという事実に緊張していた。今まではネット上で性別を隠して生きていたから。行き交う人たちにめっちゃ見られているような気がして、死にそうだった。

 出したのは小説本。A5サイズで、1話数ページにしかならない短編を、何個か入れた薄っぺらい本。クソ下手な絵だけど、表紙も書いた。勿論表紙を描いてくれるような友達もいないので、仕方なくという感じだった。クソ下手な表紙が目の前に並んでいることにも、その本の薄さにも、恥ずかしさがあった。目の前を人が通り過ぎていく時、本を見られるのがすごく恥ずかしかった。その後、サークル参加を後押ししてくれたフォロワーさんが遊びに来てくれて、ちょっとホッとした。捌けたのはそのフォロワーさんが買ってくれたのと、あと数冊だけで、印刷所の最低印刷数しか刷ってないのに、そのほとんどが余った。

 それでも、すごく楽しかった。自分の作品が形になること。それを誰かが手に取ってくれること。それからは、そのジャンルでオンリーが開催されるたびにサークル参加をした。毎回頒布できるのは数冊だけど、それでもちょっとずつ増えて、自分の作品を見てくれる人がいることが嬉しかった。

 

 サークル参加に慣れてきた、一年後くらい、いやもっと早い段階かもしれない。さっそく原稿をするのが嫌になってきた。いわゆる原稿鬱。スケジューリングが甘い自分は、毎回のように徹夜してなんとか原稿を間に合わせていた。始めの頃は、「原稿に苦労してる自分」にちょっと酔っている部分もあった。原稿期間にみんなが「原稿原稿」言っているのが羨ましてく、やっとみんなと同じステージに立てたというような感じ。だけど、何冊か出していくうちに、「結局数人しか読まない本を、こんなに苦労して作る必要があるのか?」という気持ちになり、鬱々しかった。頒布数が増えてきた、といっても増えたのは一冊、二冊という誤差レベルで、やっぱりそのほとんどが自宅で在庫になっていた。

 そもそも、個人サイトでは半年に一度、1000字に満たないような小説を書いていたような人間が、数ヶ月ごとに何個も小説を書くこと自体、無理があったのかもしれない。安易にイベントに申し込んだ過去の自分に憤ることも何度もあった。それでも、新刊は落とさなかった。新刊のないイベントに、自分が出席する理由が見つからなかった。すごく交流の広い人だったら、友達が挨拶しに来たり、既刊を求めてくる人がいたりするのだろうけど、既刊の在庫が動くことはほとんどなかったし、挨拶する友人もそんなにいなかった。そんな中、新刊も持たずにスペースに座っていられる自信がなかった。どうしても新刊を落とした時は行く理由が見つからず、悲しくて欠席をしたこともある。

 

 サークル参加を続けていくうち、今まで新刊を買ってくれていたフォロワーさん数人が、最近スペースに来ないことに気づいた。同じイベントに出席していることは知っている。こちらから挨拶だって行っていた。要するに、今まで義理で買ってくれていたのだと気づいた。それに気づいてしまった当時はまぁまぁショックだったけど、まぁ自分の作品面白くないもんな、と納得してしまう部分もあった。むしろ義理でわざわざ買ってくれていたことも有難い話だと思う。それでもやっぱちょっとショックだった。今も思い出してちょっとショックを引きずっている。

 

 そのうち、「短編はあまり需要がないんじゃないか」と思うようになる。これは確か、全く関係ないジャンルの小説書きさんが言っていたことかなんかだった気がする。「どうしたら頒布数を増やせるか」みたいなのを検索していた時に、「小説を読む人は、その物語の重厚さを求めるので短編はあまり好まれない」みたいなことを書いていた気がする。めちゃくちゃ記憶がおぼろげなので、間違ってたらごめん。まぁとにかく、ようすけは「短編じゃダメだ!」と思い始める。

 今までは勢いだけで書いていた小説も、プロットとかを立てて起承転結のある長編を書くようになった。それまでは、自分が良いと思ったシチュエーションを切り取る感じで、めちゃくちゃ短い短編(ショートショートのレベル)を書いていたけど、もっと内容に厚みのある話を書きたいと思ったし、やっぱり需要のある本を書きたいとも思った。それで、なんか脚本術とか、映画やドラマの面白いストーリーの立て方みたいな本をめちゃ読んだ。めちゃ読んだけど、まぁそれがすぐに生かされるわけではないし、そのとおりに書けば売れるというわけでもない。短編だったら、うまくまとまらなかった話はとりあえずカットしてしまって本にできたけど、長編は最初から最後まで抜けなくちゃんと書き切らないと話にならないので、負担だけが増えた。

 

 別に長編にしたからとか、参考書を読んだからといって、頒布数は増えなかった。「売れ線を意識した上で滑る」というのが、同人では一番恥ずかしい気がする。いや、別に売れ線を意識したつもりはないのだけど、どうにかしていろんな人に読んでほしくていろんな工夫をしていたから、結果的にはそういうことになるんだと思う。

 結局、その後も何冊か出したけど、色々悩んだ結果「読者意識をしたって売れないものは売れないから、自分の書きたいものを書こう」と居直る。この居直りは、自分の創作人生の中で、良い転機をもたらしてくれた気がする。そうして、A3で初めての本を出した。自分は一般の漫画や小説で、不倫モノが好きなので、そういう感じの本を出した。既に彼女がいる受けが、攻めとも付き合い出す、みたいな。実はこれ自分の中の鉄板シチュで、どのジャンルでもとりあえずやるやつ。とりあえず生、みたいな。不倫は生ビール。

 

 そのカプの受けは、ジャンル内でも落ち着いたまともな大人(?)なキャラで、不倫とは縁遠い感じのキャラなので「これは解釈違いで誰も手に取らないだろうな」と思った。しかも今回はまだジャンルでの交友関係も無く、義理買いしてくれるような友人もいない。マジで頒布数0なのではと思った。思ったけど、自分の中ではめちゃくちゃ盛り上がったシチュなので書いた。今までいろいろ悩んで書いていたのが吹っ切れて、逆に楽しくなって、ジャンル初参加だというのにコスまでした。 

 結果、少しだけ捌けた。今までのジャンルより、少し少ないくらい。でも0じゃなかった。そのジャンル自体がどんどん盛り上がっている時期だったというのもあると思う。 こんな本でも読んでみたいと思う人がいるんだ、と驚いた。それとも「なんか突然、うちのジャンルに(クオリティの低い)コスプレした男が降臨して、不倫モノ書いてるんだけど逆に気になる」みたいな感じだろうか、とも思ったけど、結果的に手にとってもらえて良かったと思ってる。

 

 その後、何冊か本を出して今に至る。友達も、少し増えた。本当に驚くほどフォロワー数は増えないのだけど、そのジャンルのイベントやライブがあると一緒に行ってくれる友達がいる。ジャンルに関係なく、遊んでくれる友達もいる。自分はそれで割と満足している。

 

 今数えてみたら、この3,4年で出した本は23冊くらいらしい。らしい、というのは、初期に出した本があまりにも恥ずかしくて、去年全て破棄してしまって、ちゃんと数えられないからだ。でも、ハイキューで最後に出した本のナンバリングが10で、A3で一番最近出した本のナンバリングが9だった。あとあんすたで2冊、DCで2冊とか出してるから、大体23冊くらいだと思う。あ、ヒロアカと堀宮も出してる。25冊くらいかな。間に合わせのコピー本とか、無配コピー本もナンバリングに数えてるから、印刷所でちゃんと製本したのは半分くらいだと思う。それでも、半年に一度しかサイトを更新しなかった自分が、よくこんなに本を出したなと思う。

 

 そんな今でも、小説を書きたくない、と思う。こんなに本を書いてきたとは思えないほど、文章力、表現力が無いからだ。場面は浮かんでいるのにそれを文字で適切に表現できなくてイライラするし、いつも「〇〇は笑った」くらいしか表現できなくて、「なんだこのクソつまんねぇ文章は!!!!!!!!!!」と自分の表現力の乏しさに辟易する。

 隣のスペースを見れば、山積みになった新刊がどんどん頒布されていく。新刊を求めて列ができる。読んでみれば、アマチュアと思えないくらい表現力があって、文字からその場の空気感、温度、匂いまで伝わってくる。すごく悔しいし、隣に座ってるのが恥ずかしくなる。

 そういう人はPixivでもやっぱりたくさんいいねをもらっていて、ブックマークしてもらっていて、SSをTwitterにあげればリツイートされまくり、アンソロなんかも頼まれちゃって……

 あー羨ましい! もう小説なんて書きたくない! 誰も来ないスペースに座っているなんて惨めな思いはしたくないし、いつまでも積もり続けている新刊を置いているのも恥ずかしい! 試し読みして、買わずに半笑いで去っていくとか、ちょっと離れたところから指さされるとか、本当もうそんな惨めな思いはしたくない!

 いろいろ私怨が混ざった……まぁとにかく、ここ数年、ずっと小説なんか書きたくない、と思い続けている。それでも書き続けるのは、やっぱり自分の「そのキャラへの愛情表現」だからだと思っている。例えば、同じ缶バッジを集めて痛バを作る人や、舞台やイベントに通い詰めて全通する人は、それがその人の愛情表現なんだと思う。自分の場合は、「本を作ること」が愛情表現なんだと思っている。

 こういう書き方をすると「本を出さなくなったジャンルには愛がないのか」とか言われそうだけど、それは大抵自分のネタストックが切れただけなので……ネタの引き出しが少ないのは……まぁすまん……大体どのジャンルでも同じネタを使いまわしてる感は否めないので、元よりネタは少ないほうなのだ。

 

 それに、単純に即売会が好きだ。読んでくれる(であろう)人がどんな人なのか実際に見ると、自分の本を誰かが読んでくれているという実感が湧くし、次も書こう! という気になる。「前回の本読みました!」と言ってくれれば、救われたような気持ちになる。同じように本を出しているサークルさんとは、それが全く知らない人であろうと、勝手に戦友のような気持ちになる。

 

 もし、「自分が二次創作をする」という道を選ばなかったら、どんなに気が楽だっただろうと思うことがよくある。毎日原稿の進捗を憂いたり、徹夜で原稿をしたりすることなく、神の創作をただ待っていればいい、それってとても楽で幸せだ。それでも、自分には推しカプの最高のシチュエーションが浮かんでしまう。(他人にとってはどうか知らんが。)そしてそれを自分の手で書き上げないと納得がいかない。他人が同じようなネタを書いていたら「クソー!」と思う。ましてや自分よりいい感じに仕上がっていたら「クソー!!!!!!!!!」と思う。もちろん神が自分と同じ妄想を書いてくれるのはありがたいことだが、やっぱり自分の手で書くことに意味があると思う。自分の言葉で自分の思いついたシチュエーションを書くのってすごい楽しい。だから自分は小説を書くのをやめられないのかもしれない。

 

 一人でも読んでくれる人がいる限り、自分の話を「面白くない」とは言いたくない。どうしても言いたくなるような衝動に駆られることばかりだけど、Twitterでは絶対に言わないようにしている。けれど、ここでは満を持して言いたい。自分の話は面白くないと思う。

 というのは、「自分にとっては最高のシチュエーションなんだけど、あまりにもクセがあるので他人が見ても面白くはないと思う」ということで、別に面白くないと思いながら話を書いているつもりはない。それに、その「最高」を自分の頭の中から綺麗にアウトプットする技術がなくて、自分の腕を通した時にその旨味がかなり損なわれているので、それはごめんな、という気持ちなのである。

 頭の中にある妄想を、そのまま伝えられる表現力、文章力があったらどんなに良いだろうか。今の自分には全くない。だからこそ、大手のように列ができることも新刊が完売することもない。印刷所の最低ロットで刷って赤字にヒイヒイ言いながらイベントに出る。

 

 でも、それが結局楽しい。自分の妄想が形になるのが楽しい。たった数人だって、自分の妄想を「それ面白いんじゃない?」と手に取ってくれる人がいる。手に取るのだって、無料じゃない。そのお金で他の人の本だって買えるし、明日のランチをちょっと豪華にすることだってできるかもしれない。読んだ結果が面白くなかったとしても、「面白いんじゃない?」と思わせることができたのは、個人サイト孤立マンの自分からしたらすごいことなんじゃないか。時には「面白かったです」と感想も頂く。めちゃくちゃすごいことだ。

 やっぱり、大手に憧れる気持ちはある。こんなに必死こいて書いた本なのだから、もっとたくさんの人に読んで欲しいという気持ちもあるし、「すごい本を書くよね」ってちやほやされたい気持ちだって正直ある。文字書きとして、絵描きさんに劣等感を抱く部分はいまだにある。漫画と小説じゃ表現のベクトルが違う、ということは頭で分かっているけれど、それでも憧れる部分がある。けれど、今の自分にできることは限られてるし、それに今の自分だって十分すごいと思う。だって普通の人は人生で自分の書いた本を売るなんて経験しないし。その点、自分は23冊も本を書いてる。やばくない? 字面だけならベストセラー作家じゃん。全然セラーじゃないけど。キリリクを偽造していたあの頃の自分に教えてあげたい。お前ベストセラー作家になるよって。全然セラーじゃないけど。

 なんだかんだ、「絵が描けないから」という理由で書いていた「小説」という表現方法も少し好きになってきている。ストーリーの一部始終を全て文字で表すとか正気の沙汰じゃねえなって我に返ることも、正直ある。絵で描けば一発で伝わるであろう場面を数文字で表現するのに、何時間もかかることだってある。文章がスッと頭に浮かんで、それをパッと書いて、「なんか気付いたら本できちゃいました〜入稿しました(早割)」つって「これがサンプルです〜(イベント一ヶ月前)」つって「表紙は〇〇さんに描いてもらいました〜(神絵師の名前)」つってかっこよく本を出したい。けれど実際は「もう原稿やりたくない」とか「誰も読まないのにメソメソ」とか「二次創作やめる」とかTwitterに書き込んでグチグチ言いながら、なんとか駄文を重ねた本を完成させている。それでも、文字を連ねることって楽しいなって思う時もある。ほとんど無いけど。それでも「このセリフは良いぞ!」ってワクワクしたり、実際に文字だけの本が印刷されて目の前にあると「全部文字だよすご〜い!」ってなる。

 今も絶賛原稿中。そして原稿鬱中。誰も読まないかもしれないこの本を、こんなに苦労して書く必要はあるのかとメソメソしている。奇跡的に読んでくれた人ががっかりするんじゃないかって不安になる。それでも、やっぱりこれが自分の愛情表現なので、これからもメソメソしながらもお話を書き続けると思う。この記事を書き始めた時もめちゃくちゃ鬱々としていたのだけど、昔を振り返ったり、最近の自分を省みたりしたら「今の自分もそんなに悪くないんじゃね?」と元気が出てきた。やっぱり自分には文字表現が合ってるのかもしれない。でもまぁ、元気が出てきたからといって原稿が進むわけじゃないんだけどね。

 

 もしかしたら、ちょっと疲れてお話を書かなくなるかもしれない。他の愛情表現の仕方を見つけて、お話を書かなくなるかもしれない。でもそれまでは、メソメソしながらも、他人に嫉妬しながらも、書きたくないと言いながらもお話を書き続けるのだと思う。それに、やめたとしても、もう文字を書く楽しさも知っているから、「また書くか〜」つって、またお話を書き出すと思う。

 ああもう本当、こんなブログで10000字も書いている場合じゃないよ。春コミの原稿書きたくないな。だって小説書くのって一時間で1000字進めば良い方だよ。でも文庫本にして2ページ分にしかならないんだよ。数十秒で読み終わる文章をねちねち書き連ねるの、本当にストレス。早く、頭の中にあるものをできるだけ正確に伝えられるような、そんでもって読者の想像力も掻き立てられるような文が書けるようになりたいな。

 もう小説書きたくねえ。それでも自分は推しカプへの愛を表現したいし、文章という表現ももっと極めたいとも思う。早く二次創作に飽きればいいのに、と思いながら、もう何年も小説を書き続けている。

トプステお疲れ様でした。

 1月27日、TOP OF STAGE14、お疲れ様でした。スペースに足を運んでくださった方、本を手に取ってくださった方、本当にありがとうございます。

 初めてのアイナナスペースでした。初めて出るジャンルというのは毎回緊張します。果たして手にとってくれる人はいるのか。手にとってくれた人が満足してくれるかどうか。今まで何冊も本を出してきたけれど、その不安はいつも拭えません。

 特に、今回はリバっぽい仕様だし、初のやまみつ本なのに大和も三月もアナルが無事じゃないし、好きなことを書けて楽しかったけれどあまりにもクセが強すぎてさすがにゼロ頒布では……? と思っていました。けれど、今回も手にとってくださるかたがいました。本当にありがとうございました。「二人のアナルが無事じゃない性癖」の人がこんなにいると思わず、嬉しい限りです。(?)

 そして、毎度恒例なのですが、イベントって本当に楽しい!!!!!! 入稿した直後は、「こんなクソみたいな本を作ってしまった……」と自己嫌悪に陥るし、イベントに行くまでは「誰も読まない本を並べに行くなんて……」と本当に足が重い。男なので、スペースに一人でいるのは心細い。何か悪口言われてるんじゃないかとか、すごく気にしてしまう。

 けれど、スペースに来てくださったかたは大体ニコニコしてくださっている。今回の無配なんか何故か左綴じにしてしまって、渡す時それを謝ったんですが、大体のかたが「大丈夫です!」と笑ってくださいました。いや、それ以外に反応の仕様がないと言われればそれまでなんですけれど、それだけでもようすけは救われました。みんなありがとう。

 あ、そういえば昨晩ふと気付いてしまったんですけど、今回の新刊三月が服を脱ぐ描写を書き忘れて突然全裸になってるんですけど、お好きなシーンで脱衣を補完してお楽しみください!!!!!!!!!ごめんなさい!!!!!!!!

 部数で言えば、メインで活動している(友達のいる)ジャンルよりは全然だったけれど、全く知らない男が作ったただのエロ本を誰かが「ほしい」と思って手にとってくださることが本当に嬉しいです。

 僕の人生初めてのやまみつ本の一冊めを手に取ってくださった三月コスのかた、「サンプル読みました!読むの楽しみです!」と言ってくださったかた、全然違うジャンルのスペースから来てくれた友達、僕のスペースに足を運んでくださった全ての方々、ありがとうございます。めちゃくちゃ読みづらい無配を押し付けてすみませんでした。新刊も無配も、少しでも楽しんでくださると嬉しいです。

 またアイナナで参加したいなと思っています。その時、またお会いできたら嬉しいです!

イベントお疲れ様でした。

 11月24日のFULL BLOOM SEASON7、お疲れ様でした。スペースに足を運んでくださった方、本を手に取ってくださった方、差し入れをしてくださった方、通販を申し込んでくださった方、本当にありがとうございます。

 イベントに参加する度、毎回不思議な気持ちになります。自分の書いたお話が本になっていること、お金を出してそれを買ってくれるかたがいること、本名も知らないのに、まるで旧来の友人のように仲良くしてくれる人がいること。「同じものを好き」ということでこんなにも素敵な出会いがあるんだなと毎回改めて気付かされます。あれ、なんかめっちゃ真面目な話になってしまった……。

 今のジャンルで、初めて本を出したのが今年の1月でした。「リスキーゲーム」という本です。万紬で本を出したい! と思ったはいいものの、まだTwitterのアカウントすら作っていなくて、慌てて作ったものの、フォロワー0の状態でイベントが近づき、(よく分からない男が書いた本なんか誰が手に取るんだろう……)と戦々恐々としたことを思い出します。でも、逆に(誰も見てないだろ)と開き直って、僕の大好きな寝取りものを書きました。万紬の二次創作の傾向にはなかなか無いものだと思うので、やっぱり本にすることには少し躊躇いがあったんですけど、「ここは俺のサークルだ!!!!!!」と逆ギレ(?)しながら書いた覚えがあります。男が一人参加で、そのイベントはコスプレもしていて、なんか知らない男がコスして寝取り小説売ってて他の人から見たらマジでこのスペースなんなんだ……みたいな感じだったと思います……

 で、そんな感じだったんですけど、意外にも手に取ってもらえて、すごく嬉しかったのを覚えています。けれど、手渡しながら(え、買うんや…大丈夫かな…寝取りやぞ…)とか(テンションだけで低クオリティのコスするんじゃなかった…)とかいろいろ思った覚えもあります。けれど後日、まさかの感想をいただきました。ようすけは疑り深い性格なので、本を買ってくれたとしても(本当に読んだのかな…)と考えてしまうタイプなので、本当に読んでくれたんだ! と嬉しく思いました。(もちろんお金を出していただいた地点でそのかたの物なので、読もうが読ままいが自由ですが)

 感想を読んでると、自分の想像している以上にじっくりと読んでもらってて、嬉しいやら恥ずかしいやら……。会場ではあまり声をかけられなかったので、みんなコスプレ男を腫れ物に触る感じだと思ってたのですが、感想でコスプレしていたことにも触れてくださり、嬉しいやら恥ずかしいやら……。それでも、自分の妄想が本になり、それを誰かが欲してくれて、更に感想を書いてくださって、本当に嬉しかったです。これからもやりたいことをやっていきます。

 

 やっと本題!!!! そんな初めて出した万紬の本が、今回のイベントで完売いたしました。本当にありがとうございました!!!!!!!!!!!!!! 何十人のかたの手に、あの拙い本が手渡っているという事実を考えると恥ずかしさで死んでしまいそうですが、本当に嬉しい限りです。そして完売後にお求めいただいた方もいたようで、お渡しすることができず、申し訳ないです。(もしこれを読んでいて、どうしても欲しい! ということであればかなりの少部数で再再印刷しようと思いますので、ひっそり連絡ください。)

 実はこの本は元々かなり少ない冊数で印刷していたのもあり(A3でのイベント参加が初めてだったので捌けないと思った。確か印刷所の最低部数くらい)、一度完売しております。それで、特に再販希望の声はなかったんですけど笑 次のイベントに出る時に既刊が欲しいな……と思って増刷したものです。増刷の際に、読み返して書き直したり書き足したりしようかとも思ったのですが、この作品は印刷にかけた地点で完成したものだとして、全く内容はそのまま増刷しました。というか読み返すのが恥ずかしかっただけというのもあります。

 再版の部数も特に多くはなく、初版再版を合わせて、最近のイベントで刷っている冊数と同じくらいなので、特に初めての本がたくさん頒布されたってわけではないんですけど、あんな勢いだけで作った本を時間が経った今でもいまだに欲してくれる人がいるのは本当に有難いです。

 今回のイベントではリスキーゲームだけでなく、今までの既刊本を手に取ってくれるかたが何人かいて、思わず「いるんですか?!」って聞いてしまいました。「最近ハマったので!」とにこやかに答えてくださった貴女、ありがとうございました。よく考えれば最初からハマってる人もいれば、つい最近ハマった人もいて当たり前ですよね。それでも、最近ハマって僕の本に辿り着いてくれたことがとても嬉しいです。そして、万紬への愛を深める力添えが少しでもできたなら幸いです。まぁ、どの既刊も、内容が、アレなんですけど……へへ……

 新刊はもちろん、今までの既刊を手に取ってくれたかたは、ピクシブで偶々既刊のサンプルを見つけてくれたのかもしれないし、新刊のおしながきを見て既刊も面白そうと思ってくれたのかもしれないし、前回本を読んで「こいつの本は面白そう」と思ってくれたのかもしれないし、偶々会場で見かけて気になっただけかもしれないし……きっかけは分からないですが、過去の本もただ過去になるだけではなく、いまだに誰かと繋がってくれているのが嬉しいです。イベント参加を続ける醍醐味ですね!

 

 初めての本が完売ということでなんだか感傷に浸ってしまい、ブログなんか書いてしまったんですけど、実はこれが最初の記事ではなく、今回の新刊の締め切り三日前くらいに「新刊落とします……無理です……二次創作向いてないんです……もうやめます……」っていうメンヘラかまってちゃん全開のブログ書いてたんですけど、公開しなくてよかった!!!!! 全然二次創作辞める気ねぇ!!!!!!! というか十数年続けてるんだから、辞めたとしても戻ってくるのは確実なんですけどね!!!!!!

 

 僕の書く本は割と設定や内容が変化球なものが多いと思っています。なので、どれかの本が貴方の心に刺さっても、次の本は刺さらないかもしれない。面白そうだと思って既刊を買ったら、趣味じゃなかったということもあるかもしれない。読んでみたら文章下手すぎて、途中でやめちゃうかもしれない。そもそも全部どれも刺さらないかもしれない。でもそれでいいです。仕方のないことです。人それぞれに好き嫌いがありますからね。その代わり僕も、これからも好き勝手に創作をしようと思います。その中で、また「ようすけと趣味が合うわ〜」とか「これいいじゃん」と思っていただける瞬間があったら、とても嬉しいです。そして報告していただけると尚更嬉しいです。調子乗ってマシュマロも置いといちゃいます。リプやDM、奥付のメールアドレスでももちろん大丈夫です!

ようすけにマシュマロを投げる | マシュマロ

 あ、もちろんマシュマロは匿名で大丈夫ですけど、お名前があると知り合い初対面に関わらず嬉しさがアップするので、ぜひ記名を…… 返事はぷらいべったーでしますので、内容がTLに流れることもありませんので、ここはひとつ、よろしくお願いします!!!!!!

 

 追記? というか外伝? 的な話をしますが、今回のイベントで売り子をしてくれたお友達、そして前回赤安のスペースで売り子をしてくれたお友達、それぞれ実はどちらも趣味を介して仲良くなったお友達が紹介してくれたお友達なのです。なので、「どういう関係?」と聞かれて正確に答えると「友達の友達……」とまるで赤の他人のような紹介になるんですけど、そういう人と友達になれるこの趣味って本当に楽しくてワクワクしますね! 今はもう友達ですよ! この年齢になって、新しい友達がどんどん増えるって本当に楽しいです。

 

 長くなりました。原稿の3000字はなかなか進まないのに、自分語りはすぐ3000字超えちゃいますね。新刊、既刊、共に手に取ってくださりありがとうございました! いつも締め切りが近づくとメンヘラ野郎になって申し訳ないです。今後はできるだけメンをヘラしないように自分の作業ペースを省みて、ちょっと頻度を減らしながらイベント参加していくつもりです。次のイベントは全く決まっていませんが、もしお会いすることがあればよろしくお願いします。今やりたいことはピクシブTwitterへの作品投稿と、あと再録ですね! 再録ってやったことがなくて、もしできるならやってみたいです。やってみたいことがどんどん溢れるよ〜。

 最後に。同人って楽しいね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!